金田家、シンガポール全3店舗を閉店:飲食業の学び
Update: 2025.09.23
2025年7月半ば、シンガポールのニュースで金田家ラーメンシンガポール全国閉店が報じられました。
報道機関であるストレーツ・タイムズ(The Straits Times)が発表する数日前には、すでにJEMとマリーナスクエア(Marina Square)の2店舗が営業を停止していました。一方、PLQ店舗は板で完全に封鎖されている状態でした。
実は、これは珍しいケースではありません。他の日本料理チェーンやフランチャイズも苦戦している状況が見られていたからです。
例えば、日系飲食フランチャイザーのジャパンフードホールディングス(Japan Food Holdings)は、約2ヶ月前に290万ドルの損失を計上しました。これは前年の損失の4倍以上に膨らんだ数字で、同グループが2店舗を削減した後の結果でした。
また、シンガポールにあった金色不如帰(Konjiki Hototogisu)の3店舗も全て閉店しています。
本記事では、金田家の口コミを、豚骨の代わりに鶏肉をベースにしたラーメンを提供する『Ramen Keisuke Tori King』の口コミと比較し、このケースから学べるポイントを解説していきます。
1.前菜は印象に残るおもてなし

以上はRamen Keisuke Tori KingのTripAdvisorレビューでよく見られた言葉の上位ランキングですが、ラーメン店なのでramen(ラーメン)が2位の言葉になっていたことは興味深いと思いませんか?
なぜbeansprouts(もやし)が1位になったのでしょうか?
簡単に言うと、本店ではもやしと卵が無料の前菜として提供されるからです。
お客様はレストランに入る時にはすでにお腹が空いているため、最初に食べるものが強い第一印象を与えます。したがって、Ramen Keisuke Tori Kingのように無料の前菜を提供することは、印象に残るおもてなしとなり、常連客を生み出す効果的な方法と言えるでしょう。
一方、金田家では前菜が提供されていなかったため、常連客を獲得できず、運営が困難な状況になった可能性があります。
あと一つ注目すべきは、お子様セットについてのレビューです。

上のレビューのように、Ramen Keisuke Tori Kingではお子様が無料で食べられることを評価するお客様もいます。一方、金田家ではお子様セットが9.9ドルと有料でした。
ラーメンは贅沢品と見なされがちで、毎日食べるものではありません。そのような中で、お子様セットまで有料にしたことが、金田家の運営をさらに困難な状況に追い込んだ可能性があります。
2.問題解決も印象に残るおもてなし

以上は Ramen Keisuke Tori KingのTripadvisorレビューです。
日本語訳:「本格的な豚骨の味が食べられて、サービスも本当に良かったです。スタッフが注文に細かいミスをしたが、私たちが平気だったのにずっと無料なものをあげたいと言ってました。そこまで気を配ってくれて最高です」


以上の2つは、金田家のTripAdvisorの悪いレビューです。
(日本語訳: 「…二つ目、会計は50.25ドルでクレジットカードで払いたかったが、レジ係が『お釣りを受け付けていないから51ドルにして』と言ったとは?まさか…シンガポールのローカルレストランに騙されたのは初めてです」
「…それでラーメンが冷めてしまいました。お湯を頼んだら『承知しました(sure)』や『少々お待ちくださいませ(I will be right with you)』ではなく『待って(wait)』と返されました。オーチャードロードで一番悪いラーメン店です。ちなみに公式インスタグラムにフィードバックを投稿したら削除されました」)
一つ目のレビューでスタッフの対応が悪かった理由は明らかですが、二つ目のレビューは日本の方には分かりにくいかもしれませんので、説明していきます。
簡単に言うと、お客様に「wait」と言うのは、お客様のお願いに苛立っているような印象を与える言い方なのです。一方「sure」は日本語で「承知しました」にあたり、適切な応対です。さらに「I will be right with you」は「少々お待ちくださいませ」に近く、丁寧で印象に残る表現でしょう。
これから海外にビジネス展開したい方々は、適切で丁寧な英語での応対を心がけることが重要です。
展開する前に熟慮を
金田家はMarina SquareとJEMに2号店と3号店を開店しましたが、開店間隔はわずか5ヶ月でした。加えて、当時継続していた国際紛争が生活費を上昇させている状況でした。この2つの要因により、運営が困難になった可能性があります。
まず、マリーナスクエアは近隣にあるサンテックシティというモールと比べて集客力が劣ります。サンテックシティは数倍大きく、より魅力的なテナントが入っているモールだからです。オフィス街に近い立地であっても、平日にはラーメンではなくフードコートでより手頃な食事を求める人が多いと考えられます。次に、JEMのモール構造は非常に複雑で、お客様が目的地を見つけるのが困難だったと推測されます。実際、Googleレビュー数を見ると、マリーナスクエア店はPLQ店の半数、JEM店はPLQ店の4分の1となっています。
これから海外展開を目指す事業者の方々は、立地や集客力を十分に検討した上で慎重に行動することが重要です。
適切な人材やフランチャイジーを探しましょう
金田家のシンガポールパートナーであるAspen Groupは、飲食業ではなく不動産開発を専門とする企業でした。これが運営効率の低下や戦略的方向性の不明確さを招いた可能性があります。海外展開を検討している日本の飲食ブランドは、F&B事業の展開実績があり、現地市場への適応力を持ち、何より変化し続ける国際情勢に柔軟に対応できるパートナーとの提携が重要です。
弊社Vintage Managementは、FC展開をお考えの企業様に、現地のノウハウや展開サポートに関するコンサルティングを提供しております。適切なサポートなしには、本記事で紹介した金田家ラーメンシンガポール全国閉店のような失敗例が起こりかねません。
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